ストーカーの心理プロファイリング
今回は身近な異常人格シリーズ、「ストーカー」のプロファイリングについてです。
プロファイリングとは、統計学的解析に基づいた分類です。
ストーカーは身近な犯罪の一つです。ストーカーのタイプ・人格、その対応策・危険度の予測をする上でもプロファイリングは役にたつと思います。
今回はストーカーのタイプを、ストーカーの人格、ストーカー行為のタイプ、危険度のタイプ別に論じていこうと思います。
目次
ストーカーのプロファイリング
・人格による分類
・行動による分類
ストーカーの危険度予測
ストーカーへの対応策
【ストーカーのプロファイリング】
◎人格による分類
人格による分類としては以下の5タイプが知られています。ちなみにストーカーによる暴力行為の頻度は、そのストーカーが精神疾患を持つかどうかにはあまり相関しませんが、人格障害があるかどうかには相関があるという報告が多いです。
①統合失調型
統合失調型は統合失調症をもとにしたストーカータイプです。統合失調症とは幻覚や妄想といった症状があり、本人自身もその幻覚や妄想が、どこまで病気が原因ででどこまでが自主的な思考なのか判別はつきません。
このタイプの人物は日常的な幻覚や妄想を抱えているので、ストーカー行為以外の日常生活でも問題を抱えていることが少なくありません。そういう意味では、比較的特定しやすいストーカーのタイプでしょう。
あとで述べますが、精神疾患とストーカーの暴力行為にはそれほど強い相関性はありませんので、ストーカーの中でも特に危険であるということはないようです。
②自己愛性パーソナリティ型
いわゆるナルシシズムのストーカーです。以前の記事でもお伝えしましたね。ナルシシズムとは簡単にいうと「自分本位の考え方しかできないタイプの人格」です。周りの人間は自分を讃えて当然という肥大した自我と、自分を理解してくれない周りの人への強い不満と不安を抱えていますので、精神的にも不安定です。
このタイプのストーカーは相手に執着します。さらに精神的にも不安定なため、とっさに攻撃的な行動を起こすこともあり得ます。
③反社会性パーソナリティ型
衝動性が強く、規範を守らず、他者への共感能力も低いタイプです。衝動性が強いため、精神的に不安定なように見られることも多いですが、彼らの怒りや泣きまねは全てあなたを操るための計算された演技です。あなたを個人というよりは道具と捉えています。そういう意味では、彼らはあなたに執着する傾向は小さいと言えるでしょう。遠くに逃げてしまえばあなたに執着がない以上追ってこない可能性もあります。そのような労を払うよりは、次の手近なターゲットを探すという行動傾向があります。そこがナルシシズムタイプとは違う部分です。
衝動性が強いため、とっさに攻撃的な行動に出ることもある危険なタイプではありますので注意してください。
④境界性パーソナリティ型
いわゆるボーダーラインという人々です。彼らは一言で言うと「見捨てられ不安」をと言うものを常に抱えています。そのため見捨てられるのを恐れて過剰に相手に尽くしたり、過剰に自己の意見を抑圧したりしています。一見すると、やや精神的に弱いだけのような人に見えます。ただ、いざ見捨てられるかもしれないという不安に駆られると、行動様式は一変します。他者や自己に対する攻撃的な行動に出ることもあります。
⑤妄想性パーソナリティ型
①の統合失調型と同じように、強い妄想を持つ人格です。といっても統合失調症は精神疾患ですが、こちらは人格障害です。強い妄想を持つため、あなたが行った何気ない動作が、「自分に好意を持ってくれている」と勝手に解釈されてしまいます。
◎行動による分類
ここではもっとも有名なミューレンによる分類をご紹介します。拒絶型・憎悪型・親密希求型・無資格型の4タイプです。
①拒絶型
元恋人・元妻などを対象にするケースが多く、きっかけは別れを切り出されることです。このタイプは自尊心が高いため、捨てられたことに対して強い怒りを露わにします。また過剰依存タイプも見受けられ、別れを切り出してもはぐらかしたりする傾向も見受けられます。
ストーカー行為は執拗で、電話・メール・尾行などを行います。
②憎悪型
もともと不満が強いわりにそれを抑圧する性質のある人たちです。よって周りの友人や職場の人間関係が上手くいっていないこともあります。
彼らは急に不満を爆発させます。たとえば些細なことを注意した(勤務態度が悪い、少しケンカになった、意見の相違があった、肩がぶつかった等)だけで、ターゲットに強い憎悪を抱き、ストーキング行動をはじめます。職場の上司やほとんど関係ない人がターゲットにされる場合もあります。よってストーキングされている人はなぜ自分が選ばれたのか、誰がストーカーなのか全く気づかないこともあります。
③親密希求型
原因は恋愛感情です。よってストーキング行為は待ち伏せや贈り物などになります。この手のタイプの特徴は、被害者が拒否を示してもしつこくつきまとうことです。前述の妄想型に近いものがあります。ミューレンによると、ストーカー全体の1/3がこれに該当するということです。芸能人やアイドルが標的になることもあります。
④無資格型
原因は恋愛感情です。行動は前述の親密希求型と類似しています。非常に自己中心的な考えを持ち、相手の意志表示などをはくらかすか無視します。
【ストーカーの危険度予測】
ミューレンによる4分類によると、実際に被害者への直接的暴力に出る確率はかなり高く1/3という調査結果が出ています。
下記の表をご覧ください。各分類ごとの被害者への攻撃手段とその確率が示されています(参考図書*1より引用)。
被害者への直接攻撃としては、拒絶型が最も多く、ついで憎悪型となっています。拒絶型と憎悪型はもっとも危険なタイプのストーカーと言えるでしょう。ただし、憎悪型に関しては前述の通り匿名状態でストーキングを行うケースがあるため、ひとたび正体がばれてしまうと一気に攻撃性がます恐れもあります。
また下記の表もご覧ください。ストーカーの属性(年齢や人格障害の有無など)と暴力行動の確率を示しています(参考図書*1より引用)。
これを見ると、年齢が若いほど・学歴が低いほど・知能が低いほど暴力行為に出る可能性が高いことが分かります。また脅迫歴がある・ストーカーとなんらかの人間関係がある・物質乱用歴がある場合も暴力行動の確率は高いようです。
【ストーカーへの対応策】
二つのことを行うべきです。
一つは関連当局に相談すること、もう一つは出来れば証拠を握っておくことです。
ストーカーの被害に合われた方が心配するのは、本当に警察が動いてくれるかどうかだと思います。この点は関連当局(法律事務所、警察などなど)に相談実績があれば、警察が動いてくれる確率は格段にあがります。まずは関連当局に相談することを考えましょう。
また、ストーカーの約30%は実際に暴力行為におよびます。決して一人で対抗しないようにしましょう。
【参考図書】
*1:越智啓太著、『犯罪心理学ープロファイリングで犯人に迫る』、株式会社 化学同人
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サイコパス vs 反社会性人格障害!どちらが危険な人格?
今回はサイコパスvs反社会性パーソナリティ障害(Anti-Social Personality Disorder:略してASPD)についてです。
サイコパスとASPDはとても似た概念だと思われている方も多いとは思いますが、実は異なる点も多い人格上の障害です。
今回はこの二つはどう違うのか、どういう危険があるのかについて紹介していきたいともいます。
いつもはざっくりした内容でお届けしていますが、今回の記事はやや学術的な内容になっております。
出来るだけ分かりやすく説明できるように頑張ります笑。
『目次』
・サイコパスとは?
・ASPDとは?
・良いASPDはほぼ存在しない。
・まとめ
『サイコパスとは?』
サイコパスとは何かについて、ロバート・ヘア博士による四因子説を用いて説明します(サイコパスの人格の分類の方法にはいくつかありますが、今回の記事内ではASPDとの比較を論じたいので、四因子説で記述していきます)。
サイコパスは以下のような特徴があります。
①対人因子
⇒表面的な魅力・病的な虚言癖・他者を操作する・尊大な自己意識・長続きしない婚姻関係
②感情因子
⇒共感能力の欠如・良心や罪悪感の欠如・情緒が浅い・責任感の欠如
③生活様式因子
⇒衝動的・自己の感情や行動をコントロールする能力が低い・刺激やリスクを求める・長期的な計画性がない・無責任・寄生的な生活様式
④反社会性因子
⇒幼少時からの問題行動・少年非行・早期からの問題行動・仮釈放の取り消し・犯罪の多方面化
最近の研究では、サイコパスの人格障害の核となっているものは「脳の機能構造の異常による情動障害」だという説が一般的になりつつあるようです。
サイコパスの情動障害とは、他者への共感能力の欠落・社会的罰を認識できない・自己の言動をコントロールする能力が低いという点です。
つまり、衝動性が高いから反社会的な行動を起こしたり、共感能力が低いから冷淡で尊大で他者を操作するということになります。サイコパス特有の「脳の機能構造の異常による情動障害」が原因であり、反社会的な行動や冷淡さなどはその結果であるとする説です。
ちなみにヘア博士の四因子説をもとに作成されたサイコパス判定方法がPCL-R法です。40点満点のテストで30点を超えるとサイコパスと判定されます。
ちなみにこのテストでサイコパスと判定される人は約1%、100人に一人の割合で存在します。
善悪の観念を宗教とか哲学で論じても結論が出ませんので、今回は単純に「反社会的行動あり⇒悪い」「反社会的行動なし⇒良い』とします。
前述の通り、サイコパスかどうかはPCL-R法の総得点で判定されます。
ただそのスコアの内訳を精査してみると、サイコパスの中には④反社会性因子だけが低いサイコパスもいるのです。そういうサイコパスは冷淡で尊大で人の気持ちは分からない人かもしれませんが、犯罪行為には走らないサイコパスです。
またサイコパスと犯罪行為の相関性を研究したデータが報告されていますが、社会的地位が高く、IQの高いサイコパスは犯罪行為に及ばない傾向があるという研究もあります。
実際、刑務所にいる受刑者のうち、サイコパスはたった15%程度であり、決して多くはないのです。
ただし再犯率を見てみると、重犯罪における非サイコパスの再犯率は5%程度なのに対して、サイコパスは40%と言われています。サイコパスは何度も再犯する傾向があり、アメリカではサイコパスは裁判で厳しい判決を受けることが多いそうです。
また、サイコパスの遺伝率は60〜70%と言われており、ほぼ遺伝で決まります。生まれながらにしてサイコパスかどうかが決まるので、後天的に更生するのは難しいのでしょう。実際にカウンセリングや認知行動療法もあまり奏功しないそうです。
最近では、共感・親愛ホルモンとも呼ばれるオキシトシンの投与によって治療するということが試されているようですが、改善したという報告もあれば悪化したという報告もあり、サイコパスの更生に関しては、これと言った方法は発見されていません。
『ASPDとは?』
前述のとおり反社会性パーソナリティ障害のことです。人口の約4%も存在します。
診断基準は以下の通りです。
- 他人の感情への冷淡さ。
- 社会的規範、規則、責務への無責任あるいは無視。
- 持続的な人間関係を維持できないこと。
- 易刺激性、および暴力を含む攻撃性。
- 罪悪感の欠如、また罰から学ぶことができない。
- 他者の非難や社会との摩擦を引き起こし、その自身の行動を合理化する傾向が顕著。行為障害が存在すること。
サイコパスの特徴と類似する点が多いです。ただ同じではありません。
ヘア博士の提唱する四因子をもとにすれば、ASPDは、生活様式因子と反社会性因子は伴うケースが多いのですが、対人因子と感情因子は必ずしも伴いません。サイコパスとは違い、犯罪を行いながらも後で心から反省したり、他者に対して共感を覚えたり、心から謝罪をすることもあるのです。
『良いASPDはほぼいない』
前述の通り、刑務所にいる受刑者のうち、サイコパスはたった15%程度であり、決して多くはないのですが、ASPDはなんと80%を占めます。
ASPDは反社会的因子を伴うケースが多いため、犯罪行為の有無で善悪を決めるのであれば、ASPDの方がより危険でしょう。またサイコパスとは違い、感情因子・対人因子に障害を抱えていないASPDもいます。彼らは犯罪を犯したあと、後悔や謝罪の態度をとることもありますので更生の余地がないとは断言できないでしょう。しかしながら再犯率はやはり通常よりは高いようです。
『まとめ』
①サイコパスの中には犯罪を行うものと行わないものがいるが、ASPDではかなりの確率で何らかの反社会的行動を行う・あるいはかつて行っていたものが多い。
②サイコパスは情動障害が顕著で、ASPDは反社会的行動が顕著。
③刑務所における割合は、サイコパスが15%で、ASPDは80%。
④サイコパスは遺伝率が高く、再犯率も高く、罰から学ぶ能力が低下しているため、更生する余地はあまりない。一方で、ASPDはかならずしも感情因子・対人因子に障害があるわけではなく、良心や共感・後悔を覚えることもあることから、更生の余地がないとは言い切れない。
犯罪を起こさないサイコパスは良いのですが(まあめんどくさい人たちではあるとおもいますが)、犯罪を犯したサイコパスは、残念ながら更生の余地はほぼないです。ちなみに後日、子供のサイコパスにも触れてみようと思います。子供が凶悪事件を起こして釈放されたあと、再び凶悪事件を起こす例は日本でも散見されます。
私としてはサイコパス犯罪者は、そのサイコパス性が改善されない限り刑務所(あるいは精神病院)から出すべきではないと思います。再犯率が重犯罪で40%、そうではない犯罪では80%にものぼることが統計学的に分かっているのです。サイコパスに限らずですが、しっかりとした管理が必要でしょう。司法も受刑者の釈放に関しては責任をもっと負うべきです。
また良いサイコパスについてです。つまり犯罪を起こさないサイコパスです。
彼らは反社会的因子はないのですが、衝動性・共感能力の低さなどの対人因子・感情因子は持っています。これが良い方向に働くかどうかは、状況次第だと思います。
たとえば衝動性の強さはリスクを恐れない・迷わないことにもつながるでしょう。ハイリスクな仕事(消防士、警察官、投資家、起業家、軍人、格闘家などなど)には向いていると思います。また共感能力が低いというのは、人の気持ちを考えない分、合理的・論理的・機械的な判断は得意なのでしょう。多くの人の反対を押し切ってでもやるとき(リストラ、増税、改革などなど)はサイコパス的鈍感力がいかんなく発揮されるのかもしれません(リストラや増税が良いとはいってませんので。念のため笑)。
以上になります。
サイコパスな人もそうでない人も、反社会的行動をとらなければ、ある程度までは個性だと思います。ご自分の、あるいは周りの人のそういう「極端な人格」の良い点はのばし・あるいは上手く運用し、悪い点はしっかり自覚してうまくコントロールしていければ良いと思います。
<参考図書>
*2:ジェームズ・ブレア、デレク・ミッチェル、カリナ・ブレア著、『サイコパスー冷淡な脳ー』、星和書店
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胃カメラやってみた!
今日は体験記です。
私は病院とか痛い検査とかは大の苦手なのですが、根性を振り絞って行ってきました。
結果的になんともなかったので一安心です。
が、楽な検査ではなかったです...。
『胃カメラ体験』
私の症状は、吐き気・胃の違和感(胃が暑くなる感じ)・食欲不振(食欲はあるんだけどすぐ食べられなくなる)でした。
なんか変な病気だったらいやだな...。
そう思ってこの前、人生初の胃カメラを受けました。
数日前
検査数日前、症状をお医者さんに伝え、胃カメラの予約を入れました。
事前に簡単な説明を受け、「当日朝はご飯食べないで来てくださいね」とのこと。
ちなみに事前情報は集めまくっていて、S大学病院の指導医もつとめる名医の方にお願いすることにしました。周りの人たちの評判もすごくよく、まったく苦痛なく行ってくれる先生とのこと。頼もしい...!
当日
午前中に検査だったので、行ってみました。
病院って苦手なんですよね...。
すごく緊張します。
「やっぱやめようかな...」と当日の朝も思ってました。
でも、「今日は体調が悪いのでお休みします」という仮病を病院に伝えるわけにもいきません笑。
意を決していざ出発!
到着すると、すぐに処置室前に案内され、鎮静剤の有無の確認、同意書などを書かされました。
同意書の内容は、万が一病変が見つかった場合放置するか担当医の判断に委ねるか...などいろいろ聞かれました。
まあ全部「お任せします」的に答えておきました笑。
そして処置室内へ
イヤなものですね...。
胃カメラの装置一式が目に入ってきます...。
「何分くらいかかる検査なんですか...?」
とおそるおそる訪ねる私に、
「何もなければ5分もかからないですよ」
とのお答え。5分なら我慢しよう...!
採血・鎮静剤投与
処置台の上に横になると、採血をされました(これはピロリ菌検査のために使うものです)。
その後、横向きになりのどの麻酔をされるのです。
これが結構違和感ありましたね...!
のどにスプレーをされるのです。
「飲み込んで大丈夫ですからね」
と言われるので飲み込みました。
そうするとすぐにのどの麻酔がかかるのがわかります。
つばを飲み込む際、普通、のどの奥が上下に動きますよね?
この動きがないんです...!
ちょっとパニックになりかけましたが、
「よだれは出していいですからね。無理に飲み込まなくて大丈夫です」
とのお言葉に安心して、つばを飲み込むのは諦めました。
次に鎮静剤の投与。
この手の鎮静剤、プロコフォールかセルシン(ジアゼパム)、ドルミカム(ミタゾラム)とだいたい決まっているのですが、見てみると白い液体ではなかったのでプロコフォールではないようです。
鎮静剤を注射で打たれました。
するとなんと不思議なんでしょう...!
効かないのです...泣!
ちょっと待って!笑
事前情報によると眠って、起きたら検査終わってるって話だったじゃん!
(事前の予測と違うことが起こるとパニックになるメンタル激弱な私です)
でも担当医の方はもうやる気満々なので、そのまま続行。
いざ、カメラを挿入へ
私は嘔吐反射が強く、内科でのどの検査されるときも嘔吐くくらいなのです。
が、そこまでの苦痛もなくするっとのどの奥へ奥へとカメラが入っていきます。
途中気がつくと、看護婦さんがずっと背中をさすってくれていました。
(なんて優しい方だっ...!)
「あ〜。きれいな胃ですね〜」
と担当医。
あっという間に終わりました。
後日談
検査の結果はその日に伝えられました。
先生は開口一番
「鎮静剤、効かなかったみたいですね...すいません...」
といってくださいました。
どうやらまれに効かない人がいるそうです。
「胃はとてもきれいでした。何の問題もないので安心してください」
とのこと。
めでたしめでたし。
ただ帰宅途中に気づいたのですが、鎮静剤、すこしは効いていたようです。
病院から地下鉄で家まで帰ったのですが、その行程がまったく思い出せないのです。
不思議な体験でした。
...とまあ私のように嘔吐反射がつよく、鎮静剤効かないし、メンタル激弱でもそこまで苦痛ではなかったですよ、胃カメラ。
もし怖くて受けられないという方がいらっしゃったら、鼻からいれるタイプのもあるそうなので、身体の不調を感じた場合はためらわず検査をしてくださいね...!
ではではまた次の記事で!
過去に大事件に!存在しないはずの記憶が植え付けられる現象!
今回は「ありもしない記憶が植え付けられる現象」を紹介します。
フォールスメモリー現象といいます。
心理学の専門用語で事後情報処理という現象が知られています。「記憶が、その後に経験した別の情報によって影響を受けてしまう現象」のことをいいます。
この事後情報処理の極端なものがフォールスメモリー現象で、「存在もしない事実が記憶に植え付けられる現象」です。
実は人間の記憶というのは、すごくいい加減にできています。
逆の言い方をすれば、物事のつじつまを合わせるように都合良く書き換えられやすいのです。
①ありもしない事実を「思い出してしまう」現象
大学生を被験者にしてある研究が行われました。
彼ら大学生にこのような質問をしたのです。
「ご両親に聞いたのですが、あなたが幼いころ、両親の車に一人でのっていたずらをしていたそうですね。そのときブレーキを触ってしまい、車が動き出して近くの車と接触事故を起こしてしまいました。そのときのことを覚えていますか?」
実際にはそんな事故は起こっていません。
その結果、どうなったと思いますか?
はじめのうちは、大学生たちは「思い出せない」と答えました。
当たり前です。そんな事実ないのですから。
ところが、数回実施した面談のたびに同様の質問をすると、なんと30%くらいの大学生がありもしない事故を「思い出して」しまったのです。
②フォールスメモリー症候群
1990年〜2000年代にわたり、各地で実際に起こった事件です。
心療内科などで行われるカウンセリングにおいて、「あなたの不安障害やうつ病の原因は、幼い頃に両親から受けた性的虐待に原因がある可能性があります。それを思い出すことによって、今のこころの症状が治まることがあります」と言われた複数の患者が、実際にありもしない虐待を受けたかのように思い込んでしまい、両親を訴えるという現象が各地で発生しました。
このような現象をフォールスメモリー症候群と呼びます。
もちろんカウンセラーの先生がたはこういうことを意図して行ったわけではありません。古典的な精神分析療法によるカウンセリングをしていただけです。
ただ当時は、人の記憶が簡単に改変されてしまうことがあまり知られていなかったのです。
いかがだったでしょうか?
ご安心ください。
現代では、人の記憶は簡単に影響を受けてしまうことが科学的に判明しています。
たとえばやってもいない犯罪行為を問いつめられて「虚偽の自白」をしてしまっても、本当にその自白が、裁判で証拠として有効なのかどうかは厳しく判断されます。
でもちょっと怖い話ですよね...!
みなさんも「記憶って結構いいかげんなものなんだな」という認識を持っていただいて、日々を気をつけてお過ごしくださいね!
それではまた次の記事で!
<参考図書>
越智啓太 著、『犯罪捜査の心理学』、株式会社 新曜社
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やってみよう!心理学研究でよく使う創造性テストとは何?
以前の記事にもよく登場した「創造性テスト」のお話です。
カンタンにいうとアイディアをたくさん出せるかどうかをテストするものです。
みなさんはアイディアを出していますか?
日常生活の工夫。
テレビ企画でのアイディア会議。
広告などのネーミングを考える。
さまざまなところでアイディアは求められます。
そのアイディア発想力を試す・鍛えるテストがどういうものなのかをご紹介したいと思います。
<創造性テスト>
①例1:レンガの使い方をたくさん思いつく。
例をあげます。
『レンガの使い方を思いつく限り挙げてください』
みなさん3分ほど考えてみてください。できるだけたくさんのアイディアを挙げてください。
どうでしょうか?
私の回答例を挙げますね。
⇒壁をつくる・お城をつくる・家を作る・重しに使う・誰が一番レンガを遠くまで投げれるか体力テストにつかう・階段をつくる・武器に使う・盾に使う・粉々にして塗料に使う・削って彫刻を作る・チョークのように使う・絵を書き込む・割ってナイフを作る・踏み台に使う・筋トレに使う・ジェンガをする・車輪止めに使う...等々
とにかく思いつく限り書き出してみてくださいね。
②出した回答例はどうやって評価する?
さて、創造性テストで書き出したアイディア群はどうやって評価するのでしょう?
評価は以下の項目に従って行います。
・流暢性:アイディアの数が多いか?
⇒単純にアイディアの数でスコア化します。
・柔軟性:アイディアの種類が多いか?
⇒アイディアの種類の数をスコア化します。私の上の回答例だと、「お城を作る」と「家を作る」はレンガの使い方が同じなので重複しているとカウントされます。一方で、「お城を作る」と「筋トレに使う」はレンガの使い方が違いますので別個のアイディアを出せたとカウントされます。
・独自性:アイディアは独自性があるか?
⇒「お城を作る」「家を作る」「壁を作る」などは、レンガ本来の使い方であるため、独自性のあるアイディアとは言えませんね。一方で「割ってナイフを作る」「粉々にして塗料にする」などは本来のレンガの使い方ではありませんし、レンガという与えられた形や質を変化させた用途ですので、独自性ありとカウントされます。
・具体性:アイディアは抽象的ではなく、具体的か?
⇒アイディアが具体的であればカウントし、抽象的であればカウントしないという尺度です。
このほかにもいろいろな評価項目がありますが、おおむね上記のような評価を行います。
ここで逆に考えてください。
コツをお教えいたします。
アイディアの量・種類・独自性を出そうとはじめに考えるのです。
レンガの問題に話を戻しましょう。
アイディアの種類をたくさん出すには、レンガ本来の使い方以外を思いつこうと考えるのです。レンガは重い・壊せる・割れる・重いので沈む・削れる・丈夫である...などの抽象的なレンガの特徴を考え、そのあとでレンガの用途を考えるのです。そうすると自然とレンガ本来の用途以外のアイディアを思いつくことができます。
アイディアの独自性を考えようとするのであれば、レンガにはない属性をまず考えましょう。レンガは「食べれない・読めない・映らない・自分で動けない・暖かくない...」のように「ないもの」を列挙しましょう。そのあとで連想するのです。たとえば「読めない」であれば、「レンガに文字を掘って石碑にする」「レンガをたくさん並べて文字を作る」「レンガをチョークのように使って文字や絵を書く」というものが思いつきますね。また「暖かくない」からは「レンガを火で熱して、それを使って肉を焼く」も良いでしょう。前述のとおり「ないもの」をもとに考えているため、自動的にレンガ本来の用途ではないアイディアが浮かぶことになります。
それではコツをつかんだところで、再度下記の問題に取り組んでみましょう!
③例2:下記の絵を見て、何の絵なのか、思いつく限り自由に答えましょう。
3分ほど考えてみてください。
どうでしょうか?
私の回答例は以下の通りです。
⇒カメレオンが目を閉じた・お金を入れて望遠鏡を見ていたが時間切れになった瞬間・道路標識・硬貨の上に硬貨を立てている・望遠鏡で覗いた蟻の行列・望遠鏡で空を見ていたら流れ星が通った・ネコの眼・眼が細い人が丸メガネをかけている・二つのボールが思いっきりぶつかった瞬間・おしり...など。
暇なときにこのような訓練を行うことで、頭の回転が速くなり、アイディアも出しやすくなります。
参考にしてくださいね!
過去記事でもアイディアの出し方のコツを紹介していますので、参考にしてください。
アイディアの数が増える前動作、4種類のブレーンストーミングなどの発想法を取り上げた過去記事を下に貼っておきます。
海外ドラマを科学的検証!「しぐさや表情でウソは見破れる」はホント?
今回は「ウソは見破れるの?」についての記事です。
よくドラマや小説でも見かける方法がありますよね?
「ウソをつくと口ごもる」
「ウソをつくと声のピッチがあがる」
「ウソをつくとまばたきが増える」
みなさんは、これってどこまでホントだと思いますか?
①ウソを見破るのは難しい
こんな研究があります。
警察官・心理学者・取調官・裁判官などさまざまなタイプの人約16000人を集めて、ウソを見破る確率を調べた大規模な研究があります。複数の科学文献を集めたメタ分析ですので、信頼性は高いと言ってよいでしょう。
その結果、彼らがウソを見破る確率は約54%だったそうです(*1)。
適当にあてずっぽうでやったとしても50%ですので、心理や取調べの専門家でもウソを見破るのは難しいと言わざるを得ないです。
でも中には特殊な人もいて、ウソを見破るのが上手い人もいるそうです。
彼らはいったい何をしているのでしょうか?
結論からいうと彼らはウソを見破るのが得意というよりも、
「上手な尋問のテクニックを持っている」
「ウソを直接見抜くのではなく、こちらの尋問に対して相手の心理がどのように変化するかを上手に観察している」
ということのようです。
②相手の心理を見破るにはプレッシャーをかけることが必要
前述のとおり、「他人がついているウソをただ観察して見破るのは非常に難しい」です。では相手の心理変化はどうやって見破るのでしょうか?
みなさん聞いたことがあると思いますが、言葉でウソをつこうとしても、身体の仕草や表情に特徴的なパターンが現れるから、これを観察すればウソが見抜ける確率が上がる、とする説がありますね。
これはもともとアメリカの心理学者、ポール・エクマン博士の説です。
彼は「ヒトがウソをつく場合、注意とコントロール能力は言葉に集中する。その結果、動作や表情をコントロールするのに注意が向かなくなり、結果として仕草や表情に不自然な点が観察されるようになる」といいます。
たとえば、よく指摘されているのは下記の動作です。
・口ごもる
・言い間違う
・声のピッチが上がる。
・質問から返答までの時間が長くなる。
・発汗
・まばたき
・顔の表面温度の上昇
これらの検証結果はどうなっているのでしょう?
被験者にわざとウソをつかせてた後、上記の尺度に変化が現れるか検討されたことがあるのですが、多少の差はあるものの大きな変化はないというのが結果でした。
ただ、とある状況で同じことを行うと、上記の項目に変化が現れたのです。
それは何か?
カンタンに言うとプレッシャーをかけた場合です。
次にこんな実験が行われています。
さきほどのようにただウソをつかせるのではなく、模擬的な窃盗行為を行わせます。
その後、取調官をうまくだませたなら報酬がもらえることになっています。
さらにウソをつく被験者は、取調官に対して、窃盗行為の説明しますが、その際自分の行動の最後から最初の順(普通の説明の仕方とは逆。いつもとは違うタイプの説明をさせられるので脳にかなり負担がかかります)に説明をさせました。
その結果、ウソをつく被験者の「口ごもり」「いい間違い」「行動の説明の詳細さが欠ける」「身体の無意味な動き」などの増加が確かに確認されたのです。
つまり、ウソを表情や仕草で見破るには、たとえば「窃盗行為をしているという後ろめたさ」「ウソが成功するかしないかで、自分にとって大きな利益あるいは損失になる状況」「逆に説明させられるなどの心的負荷」などのさまざまなプレッシャー(専門的には認知的負荷といいます)をかける必要があるのです。
③ウソをつくときの人間の心理とは?
ウソをつく人の心理状態は、「適切なプレッシャーがかかっている状態であれば、ウソがばれるのではないかという不安・恐怖でいっぱいな心理状態」になります。
不安・恐怖に駆られると、いつもは見られないような動作・仕草・表情が現れます。逆に普段みられるはずのものが消失したりします。これをきちんと観察するのです。
(ここで注意してほしいのは、そもそもプレッシャーがかかっていないなら相手は不安・緊張を感じないので、不安・緊張特有の行動が現れません。またサイコパスや一部の脳障害を抱えている人のように不安・緊張をそもそも感じない人も、不安・緊張特有の行動は観察されません)
まず不安についてです。
人間は強い不安を感じると、それを解消しようとする心理状態になります。その結果、起こる身体の行動を「不安回避行動」といいます。
実は相手の心理状態を読むのが上手い人は、この不安回避行動をよく観察しています。
不安回避行動は結構個人差が大きいので、「こういう行動をとったときはアヤシい」みたいなことを一概には言えません。
不安になると、ある人はじってしていられず動き出しますし、ある人は動かなくなりますし、ある人は自分の両腕をさすったり、ある人は目を閉じたり、まばたきの回数が増えたりなどさまざまです。
よって、この不安回避行動を観察することによって相手の心理を見極めるには「相手の心が平静なときの状態」と「不安を感じている状態」の二つを知り、比較する必要があります。
つまり、プレッシャーがかからない(相手が不安を抱かない)状態をまず観察し、何気ないプレッシャーのない日常会話をしたときに相手がどんな癖があるか・あるいはないかなどを観察します。次に相手にプレッシャーがかかるような質問や言動を行い、どんな行動変化が起こるかを観察します。
何も変化が現れなければ相手の心理状態に変化はなかったのでしょう。
しかし、もし何らかの行動変化が見られれば(ある行動がなくなる・あるいは急に出現するなど)相手の心理に何か変化が起こったかもしれないと判断するのです。
つまり、ただ単に観察しているだけでは相手の心理は見破れないのです。相手の心理を見破るためには、こちらから積極的にアプローチ、つまり上手に尋問していく必要があります。その一つのテクニックが前述のとおり「プレッシャーをかける」です。
例を挙げます。
相手は足を組んで、右手を机の上に置いたまま話す癖があるとします。会話を続けてもその姿勢は崩れませんでした。
ところがある話題にあなたが触れたとき、急に相手が机の上の手を引っ込めたり、組んだ足を崩したりしたとします。
そのときは、相手の心理状態に何か変化があったと解釈するべきでしょう。
(もちろん足を組むのが疲れたから、足を緩めた可能性もあるでしょう。その場合は再度確認しましょう。何気ない会話に戻し、相手が再び足を組んで右手を机の上に置いたとします。そこでさきほど反応のあった話題にもう一度触れます。再度相手が姿勢を変えたり、普段見られないような行動に出たりしたら、ただの偶然ではなく心理的要因の可能性が高いです)
また恐怖についてです。
恐怖に対する人の反応は、不安の場合よりも顕著で、大まかな見方をすれば個人差も大きくはないです。
恐怖を感じると、人間の脳は意識的動作を行う大脳皮質の働きが弱まり、大脳辺縁系という無意識な動作を司る領域の働きが強くなります。この結果、意識的な動作(たとえばウソをつく、不安を隠そうとするなど)を行う能力が大きく低下します。一方で、大脳辺縁系が有意になることにより、その人本来の心理状態が行動に現れやすくなります。
たとえば汗をかいたり、相手の目をじっと見たり逆に逸らしたり、身体がこわばったり、急に攻撃的になったり...などします。
このような大脳辺縁系の反応を「逃走・闘争反応」といいます。
典型的にはまず全身の筋肉が一時的に硬直します。しばらくするとなんとかその場を逃れようとする逃走反応がおこります(たとえば尋問されているのに、関係ない話題を持ち込んで話題を逸らそうとしたり)。それでも恐怖の対象から逃れられないと悟ったとき、人間は最後の手段、闘争反応に出ます。つまり攻撃な言動に出るのです。明らかに怒った表情をしたり、怒鳴ったりするのです。
相手を問いつめていて、話題が確信に触れた瞬間、普段目線がふらふらしている人が急にこちらの視線に合わせ、身体のふらふらした動きがぴたりと止まれば、相手の心理状態に大きな変化があったのでしょう。その後、相手が話題を逸らしたり、関係のない話を延々と続け(ウソの言い訳を考える時間稼ぎかもしれません)、それでもあなたが話題を変えなかったとき、相手が急に不機嫌になったりすれば、相手はその話題に対して嫌悪感や恐怖をいだいているかもしれませんね。
ただ強調しておきたいことは、相手の心理状態の変化が起こったことは比較的カンタンに見破ることが出来ますが、だからといってその心理状態の原因が「嘘をついている」ことかどうかを断定することは非常に難しいです。
繰り返しますが、相手の心理状態の変化はしっかり観察すれば読めます。しかし思考を読むことは不可能なのです。
<まとめ>
①ウソを見抜くことは非常に難しい。しかし、相手の心理変化は「不安」「恐怖」「不安回避行動」などを通して推測することが可能である。
②相手の心理変化をきちんと推測するには、適度なプレッシャーをかけて「不安」「緊張」を誘発させるような尋問テクニックが有効である。
③上記2点を実行できたとしても、相手の心理状態は推測できても、思考を読めるわけではない。
以上になります。
相手の行動が思考や心理の産物とは限らない点が、行動から心理を読むことの難しさの一つの原因にもなっています。
上手に尋問することで相手のウソは見破れなくても、相手の心理変化を読み取り、相手にとって何が不都合なのかは推測できます。相手がウソをついているかどうかはそこから推測していくしかないですね...!
相手の心理を見抜くにはもう一つの方法があります。
「共感能力」を使うという手段です。
「なんとなくイヤな予感がする」「あの子今日機嫌わるいのかな」とか感じて、結構そういう予感が的中した経験をお持ちの方も多いと思います。
また、フィクションと分かっていても、マンガや小説・映画に共感して泣いたり、主人公に感情移入して一緒に怒ったり、悩んだりしたご経験もあると思います。
そういう人間が本来もっている感情移入する力・共感することで相手の心理を理解する力を「共感能力」といいます。
本来群れをなすことで繁栄してきた人間が、コミュニケーション能力の一つとして発達させてきたものだと言われています。
実はこの共感能力、訓練であげることが出来ます。
よかったら下記の共感能力に関する過去記事も参照してくださいね!
<参考図書>
*1:越智啓太 著、『犯罪捜査の心理学』、株式会社 新曜社
*2:J・ナヴァロ、M・カーリンズ著、『FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学』、株式会社 河出書房新社
腸内細菌を育てて、メンタルも体調不良も改善できるかも!?その②
今日は腸内細菌により性格が変わるかもしれないという記事についてご紹介します。
以前の記事でも腸脳相関のお話はしました。
腸内細菌がメンタルの状態にも影響するお話はしました。
ある特定の腸内細菌がうつ病や注意力などの精神疾患や脳機能に影響を与えていました。
今回はそのお話の追加情報のお話です。
『ヒトでの研究報告』
①腸内細菌は不安といった感情だけでなく、実際の脳の構造にも影響する
カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究です。
40人の被験者の腸内細菌を調べ、その後被験者にさまざまな画像を見てもらい、脳の様子をMRIで観察しました。
その結果、二つの腸内細菌と脳機能の関係が示唆されました。
一つ目は、ブレボテラ属という腸内細菌を持っていた被験者は、海馬(記憶を司る領域)が小さく、ネガティブな画像をを見た場合の不安も強かったそうです。
二つ目は、バクテロイデス属という腸内細菌を持っていた被験者は、前頭葉と島(判断力や論理的思考能力を司る)という部位の灰白質が多く、海馬も大きいことが分かりました。また、このタイプの被験者は、ネガティブな画像を見せられても、不安を感じる傾向が弱かったそうです。
②自閉症と消化器症状が軽減する。
自閉症の患者は多くの場合消化器症状も伴っていることはよく知られています。
アリゾナ州立大学で行われた研究です。
小規模の研究ではありますが、18人の自閉症患者に対して、腸内洗浄や抗生物質をを投与して腸内細菌を除去後、本研究用に調製した腸内細菌を移植しました。2年後、患者の消化器症状・行動などを再調査しました。
その結果、平均で約44%ほど自閉症・消化器症状の改善が見られたのです。
自閉症は治療法が少なく、また一生涯つき合っていくしかない疾患と言われていますが、もしかしたら今後腸内細菌の研究が進み、大きな改善効果も見られる日が来るかもしれません。
『動物実験での研究報告』
マウスを使った動物実験においては、性格の違う二匹のマウスを用意して、互いの腸内細菌を移植してみて、性格に変化が現れるかどうかという実験がよく行われています。
たとえば、好奇心が旺盛で高い所にのぼるマウスとそうでない恐がりなマウスを用意します。この恐がりなマウスに、好奇心旺盛なマウスの腸内細菌を移植すると、なんと好奇心旺盛なマウスと同様のふるまいを行うのです。
このような実験を通してマウスの研究では、腸内細菌が攻撃性・コミュニケーションなど、さまざまな性格に影響していることが明らかにされています。
また、どうやら性格だけでなく、肥満にも腸内細菌は関係しているようです。
ある研究によると、肥満マウスの腸内細菌を移植されたマウスは2週間で体脂肪が47%増加したのに対して、健常マウスから移植をされたマウスはわずか27%だったそうです。
『まとめ』
腸内細菌とさまざまな疾患(精神疾患やアトピーなどの免疫疾患、消化器疾患)の研究は近年、飛躍的に進んでいます。
人間の腸内には1000種類以上の腸内細菌がいると言われ、その一つ一つの役割が完全に解明されるにはまだ時間がかかるとは思いますが、今回紹介した自閉症の治療としても研究段階で限定的にではありますが、使われ始めています。
今後の研究の進展に期待したいですね!
暴力的ゲームは子供に悪い影響を与えるの?
今回は「暴力的ゲームによる子供への影響」についての記事です。
よく聞きますよね?
「暴力的な表現のあるゲームは子供に悪いのでは?」
という議論。
子供さんが小さいころは、何かとご両親も心配かとは思います。
議論することは重要です。
なのでこういう議論がなされるのは理解できます。
ただ重要なのは、表現の自由がどうのとかいろいろそういう的外れな議論を行うのではなく、「実際に子供に悪い影響があるのかないのか」を科学的に検証・確認すればいいだけなんです。過去の文献を、大規模調査の研究報告を見ればいいんです。
科学的に検証・調査してみて影響ないなら問題なし、影響ありなら問題あり。
事実確認が先です。
事実確認してないのに作品が悪いとか言う議論は、犯罪が起こっていないかどうかも不明なままなのに、犯人探しを先行させるような愚かな行為です。一歩間違えればえん罪・魔女狩りです。
科学的に問題ありと判定された後で、じゃあどうすればいいか、規制するのか・表現の自由はどうなるのか・法的には・社会によるケアは...などの次のステップの議論すればいいのです。
まず影響あるのか・ないのかの事実確認が先です。
というわけで、暴力的なゲームによる子供への影響を調べた研究をご紹介したいとも思います。
『子供の暴力的ゲームのプレイと、行為障害・抑うつの間にはほとんど相関は認められなかった』
イギリスを中心とした研究グループの報告です。
約1800人の子供たちのデータが集められました。
8歳時点で暴力的なゲームをプレイしていた子供が、行為障害(後述します)を呈する可能性はほんのわずかには上昇したが、影響はきわめて弱いという結論になっています。また子供が抑うつなどの症状を呈する可能性についても統計学的に認められなかったとされています(*1)。
また2015年のオックスフォードの研究、2014年に発表されたアメリカでの研究においても暴力的ゲームと子供の問題行動には関連がないことが示されています。
ゲーム依存症になるほど長時間プレイした場合は話は別ですが(ゲームのプレイ時間が長時間化した場合は、悪い影響があるとする報告もあります)、普通にゲームをプレイする分には、それが暴力的なものであったとしても子供の問題行動の原因にはならないことが示されています。
(行為障害とは)
素行症とも呼ばれます。反社会的、攻撃的な言動、社会規範に対する逸脱行為を繰り返す状態です。殺人や放火といった重犯罪はもちろんのこと、脅迫的な態度、暴言、学校をサボったり、よくケンカをしたり、病的なまでに嘘をつくなどの症状としても現れます。長期間無治療の状態が続いた場合、(年齢によりますが)反社会性パーソナリティ障害と診断されることもあります。
『まとめ』
今回ご紹介いたしましたように、多くの研究が暴力的ゲームと子供の問題行動には関連がないとしています。
繰り返しになりますが、「暴力的なゲームは子供に悪い影響を与えるかも?」と思うのなら、それをきちんと科学的に検証・確認するのが先です。もし子供に何の悪影響もないのに犯人探しだけが先行すれば、何の関係もないクリエイター側が魔女狩りされるだけです。
一部のマスコミやコメンテーターの方、何の科学的専門知識も調査能力も持たない芸能人の方には一度冷静になっていただいてから、発言してもらいたいですね。
私はあまり時事ネタはあつかいたくはないのですが...最近アンパンマンが話題になっていますね。
アンパンマンの視聴は、子供に暴力的な影響を与えるという主張があるようです。
まあ本気でそう思っているのは一部の人だけだとは思いますけど笑。
もしホントに心配なら、ご両親の方はどうか子供さんと一緒にアンパンマンを見て、子供さんと話し合えばいいんですよ。
「今のシーンどう思う?良いことかな?悪いことかな?」
「いいことだと思う?いけないことだと思う?xxちゃんはどう思った?」
こんな風に、ご両親が子供さんと対話を通して教育していけばいいんです。
間違っても幼い子供さんをテレビやYouTube付けっぱなしのパソコンの前に放置して、自分はスマホをポチポチなんてやめてくださいね。
あと幼い子供のことを思うなら、ぜったい怒鳴り合いの夫婦ケンカは止めてください(したいなら子供の見てない・聞いてないところでやってくださいね)。そちらの方がよっぽど子供に悪影響があります。
幼い子供にとっての世界は、親が大半を占めます。良いことをしたとききちんと褒めれば自尊心が育まれ、ダメなことをしたとききちんと諭せば良心が育ちます。
参考にしていただければと思います。
ちなみに都合の悪い真実を書かせていただきますが、反社会的行動は50%が遺伝です(下の過去記事を参照ください)。
身に覚えのある親御さんは、子供さんがそうならないよう最善をつくしてください。
<参考文献>
*1:Peter L.Etchell et al (2016). PLoS ONE January 28
その目標、ホントに無理?不可能の錯覚
今回は目標達成法をご紹介します。
みなさんは目標はもって日々を過ごしていますか?
人間は平均で約10個ほどの目標をもって過ごしていることが分かっています。
この目標には「今年は結婚するぞ!」「起業するぞ!」という大きな目標も含まれますし、「今年はダイエットするぞ!」「毎日運動をするぞ!」という小さな目標も含まれます。
目標を持つことは言うまでもなく大事です。
自分の成長につながりますし、日々努力することがあるだけで楽しい毎日になります。
ただ、目標が達成できなかった場合、「なんて自分はダメなんだ...」と自己嫌悪や自己否定が起こってしまう場合もありますので、気をつけなくてはなりません。
今回は目標を達成するために役立つ3つの情報をご紹介したいと思います。
<目標が達成できないかも...という錯覚現象>
①目標達成を困難にする錯覚・思い込み
こんな研究があります。
小学3年生の子供を集めました。
それて「5円玉を机の上に立ててみてください」と指示を出しました。
その結果、半分の子供は5円玉を立てることに失敗しました。
次に、「5円玉を机の上に立てて、その5円玉の穴に糸を通してください」と指示を変えたところ、ほとんどの子供が5円玉を机の上に立てることができたのです。
なぜこのような現象が起こったのでしょう?
解釈としては、はじめの指示は5円玉を机の上に立てることがゴールになっていて、かつ子供達は「5円玉を立てるのは難しい」と思い込んだからだと考えられています。
一方で二回目の指示では、5円玉を立てることはただのプロセスになっていて、ゴールではなくなっています。そのため、子供達の「5円玉を机の上に立てるのは難しい」という思い込みがなくなり、成功率が上昇したのではないかと考えられています。
②悪い錯覚や思い込みがあるかもしれないことを自覚する
私たちは目標をたてて、いざ挑戦しようとするとき、「無理かもしれない...」などの悪い思い込みや錯覚にとらわれてしまい、そのせいで目標が達成できなくなることが多々あるのです。「自分は今、錯覚のせいで目標が難しく見えているだけかもしれない」と自分に問いかけてみましょう。
<SMARTシステム>
①正しい目標設定の仕方
なんとなく漠然とした目標設定では、なんとなく努力して、そしてだいたい失敗します。
目標を効率よく達成するためには、目標の立て方も重要になってきます。
この目標を達成する確率を上げるための目標設定法をSMARTシステムと言います。
Simple・Specific...より簡潔に、より具体的な目標設定をする。
Measurable...評価可能な目標設定にする。
Achievable...達成可能な目標設定にする。
Realistic...現実的な目標設定にする。
Time-bound...期限を決める(だらだらやらない)
頭文字をとるとSMARTとなるので、SMARTシステムと呼ばれています。
②良い目標と悪い目標
例をあげましょう。
・ダメな目標設定...「英語を勉強しよう!」
・良い目標設定...「来年のTOEICで100点アップするために、毎日単語帳を20ページ勉強する」
目標は達成可能でなければいけません。
達成不可能・実現不可能な目標を立てて努力するのは時間の無駄です。
また、評価可能な目標でなければいけません。「毎日単語帳を20ページ勉強する」はできたかどうか判定可能ですので、その日努力したかどうかを自分で客観的に判断できます。その結果、「だらだら無駄に時間ばかりかけた割に何も進んでいなかった」という最悪の事態を回避できます。
SMARTシステムにのっとった目標設定をしましょう!
<やる気を出すには?>
①きつい努力や自分の幸せとは関係のない努力は続かないことを自覚する
きつい努力はつづきません。
目標を達成したら自分にどのような良いことがあるかをイメージしましょう。
ダイエットが目標なら、「あの可愛い水着が着れて、夏のビーチで楽しく過ごせる」などをイメージしましょう。
英語を勉強することが目標なら、「英語がペラペラになって、いままで避けがちだった海外との会議や海外出張、国際学会などにも積極的に呼ばれて、みんなから頼りにされる」自分像をイメージしましょう。
自分の幸福と目標達成を必ずリンクさせましょう。
②習慣化する
SMARTシステムにのっとって目標と具体的なやることリストを作ったら、とりあえずやってみることです。やるうちに自然とそれがただの習慣になり、苦ではなくなっていきます。
みなさんも朝起きたら歯を磨いたり、顔を洗ったりしますよね?
朝のランニングをしたりする人もいるでしょう。
それをいちいち「めんどくさいな...」「きついな...」と感じる人はいないはずです。
なぜなら「習慣化」されているからです。
「とりあえずやってみる」が習慣化を引き起こし、努力が苦ではなくなるでしょう。
③集中力を上げる
集中力を上げるには二つの方法があります。
一つは「集中力は長続きしないことを自覚すること」です。
人間の集中力には個人差があり、だいたい45分〜2時間が限界だということが分かっています。それ以上の時間をかけて努力しても、集中力が落ちていてパフォーマンスが低下するので、努力の成果は出ないし努力が苦になるだけの時間の無駄が起こります。
そこでおすすめなのは、「ポモドーロ・テクニック」です。
30分だけでいいのでめちゃくちゃ集中して、5分休憩をとる。これを繰り返すのです。これで無理なく集中でき、生産性も向上します。
二つ目の方法は「適度におやつを食べる」です。
実は血糖値が下がるときに人間の集中力は低下し、血糖値が上がると集中力が上がることが分かっています。
よって、上手におやつを食べて血糖値を上げることで集中力を維持することが大切です。
おすすめなのは低GI食品です。
ふつうのおやつを食べた場合、血糖値はすぐ上がりますが、その後すぐに下がってしまうため、集中力も長続きしません。
一方で低GI食品を食べた場合、血糖値は緩やかにあがるため、集中力が長持ちしやすいと考えられています。
以上です。
目標設定から達成までの方法になります。
ぜひ試してみてくださいね!
下記には創造性を上げる方法・良い習慣・心理学的思い込みの力による目標達成術・自分を売り込み周りの力を借りる自己プロディースの方法も紹介しています。
ぜひ過去記事もご参照くださいませ!
自然と無駄遣いが減る?お金と心理学の話!
みなさんはこんなご経験はありませんか?
「給料は上がってるはずなのになぜか貯金が増えない...」
「大きな買い物をした覚えはないのに出費が多い...」
今日はそんな悩みを解決する、お金と心理学の小話を紹介していきたいと思います。
さっそく行ってみましょう!
<あなたは現金派?カード決済派?>
みなさんはお金を支払うときどうしますか?
現金で支払いますか?
それともカードやスマホ決済をよく使いますか?
実はどちらを選ぶかだけでも、人の金銭感覚は大きく異なることが研究により明らかにされています。
マサチューセッツ工科大学の研究です。
研究の対象となったのはMBAコースの学生たちです。
彼らにとあるオークション実験に参加してもらいました。
「プロバスケットボールチームの試合観戦チケットに対していくらまでならお金を
払いますか?」という実験です。
被験者を二つのグループに分けます。一つ目のグループは現金で支払うよう指示されたグループ、二つ目はカード決済するように指示されたグループです。
この結果、驚くほどの差が出ました。
現金で支払うグループは平均28ドルまでなら支払っても良いと提示したのに対して、カード決済グループの提示額はなんと平均60ドルでした。
カードで支払うと2倍以上お金を多く使っても良いという心理状態になるのです。
他にもカード決済をした場合、
「モノを買う際の迷いが少なくなる」
「思考様式が変わる」
「いくら払ったか覚えていないことが多い」
「チップを払う確率が上がる」
などの研究報告がされています。
また、人間は現金を使う場合、脳の痛みを感じる部位が活性化されるとの研究報告もあり、おそらくこの現象が現金を使いすぎないようになることに一役買っていると思われます。
カード決済だとこの「迷い」が生じないんですね。
カード決済やスマホ決済は無駄遣いしてしまう傾向にあるので、貯金を増やしたい方・無駄遣いを止めたい方は、現金支払いに切り替えてはいかがでしょうか?
<死について考えるとお金を貯め込むようになる>
ポーランドで行われた研究です。
心理学者は被験者に「自分の死を想起させる質問」を行いました。
このあと、参加者のストレスレベルを測るため、身体の中のストレスホルモンを測定しています。
このあと、被験者を二つのグループに分けました。
片方は本物の札束を渡され、もう片方のグループは数字が書いてあるだけの紙の束を渡されました。
そしてそれを数え、額面ないしは数字を合計してくださいと指示されたのです。
その後、参加者のストレスレベルを計測したところ、本物の札束を数えたグループは、ただの紙の束を数えたグループよりもストレスレベルが5分の1まで低下していたのです。
お金は死への恐怖さえも軽減させることが分かったのです。
この実験を行った心理学者によると、お金にはある種の麻薬性があるのではないかという考察がなされています。その結果、お金に触れることで死への不安を回避しようとする心理が働いたからこういう結果になったのではないかと考えられています。
他の研究でも、あらかじめ被験者に死への恐怖を想起させたグループの方が、そうでないグループよりも、「貯金」にお金を回す配分が多くなったとの報告もあります。
みなさんも貯金を増やし、無駄遣いを止めたくなったら、自分の死や健康問題について考えてみたりするとよいかもしれませんね!
<金銭感覚も狂わせるプライミング効果>
とある研究が行われました。
トレーナーの横にCDが並んでいます。
トレーナーの値段はあるときは10ドルと値札が付いており、あるときは80ドルと書いてあります。
このとき、通行人に「CDの値段はどれくらいだとおもいますか?」と質問をしました。
その結果、トレーナーの値段が10ドルのときはCDの値段は7.29ドル、トレーナーが80ドルのときはCDの値段は9ドルと答えたそうです。
となりに並んでいるまったくCDとは関係のないトレーナーの情報に通行人は惑わされてしまったのです。
このように「はじめに与えられた情報をもとに、次に入ってきた情報を処理する人間の心理傾向」のことをプライミング効果と心理学の世界では呼びます。
<まとめ>
まとめます。
①カードやスマホ決済は、現金支払いよりも2倍以上無駄遣いをする傾向がある。
②死への不安を想起しただけで、人はお金を貯金する傾向が増える。
③人はモノの値段を常に正しく評価できているわけではない。はじめに提示された情報でたやすくコントロールされてしまう。
貯金や無駄遣いに気をつけたければ、カード・スマホ決済は止めて、自分の死への恐怖や健康問題を常に考え、さらにこのモノには「私だったらこの値段なら買う。それ以上だったら買わない」とはじめからしっかり決めておくことが重要です。
お金はしっかり貯めておくと心の安心にもつながりますし、貯金が少ないと不安になりますよね。
お金は自分の心理状態も安定にしてくれます。
お金と上手につき合っていきたいですね...!
以上です。
それではまた次の記事で!!
<参考図書>
クラウディア・ハモンド著、『MIND OVER MONEY 193の心理研究でわかったお金に支配されない13の習慣』、株式会社あさ出版