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サイコパス vs 反社会性人格障害!どちらが危険な人格?

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今回はサイコパスvs反社会性パーソナリティ障害(Anti-Social Personality Disorder:略してASPD)についてです。

サイコパスとASPDはとても似た概念だと思われている方も多いとは思いますが、実は異なる点も多い人格上の障害です。

今回はこの二つはどう違うのか、どういう危険があるのかについて紹介していきたいともいます。

いつもはざっくりした内容でお届けしていますが、今回の記事はやや学術的な内容になっております。

出来るだけ分かりやすく説明できるように頑張ります笑。

 

 

『目次』

サイコパスとは?

・良いサイコパスと悪いサイコパス

・ASPDとは?

・良いASPDはほぼ存在しない。

・まとめ

 

 

 

サイコパスとは?』

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サイコパスとは何かについて、ロバート・ヘア博士による四因子説を用いて説明します(サイコパスの人格の分類の方法にはいくつかありますが、今回の記事内ではASPDとの比較を論じたいので、四因子説で記述していきます)。

サイコパスは以下のような特徴があります。

①対人因子

 ⇒表面的な魅力・病的な虚言癖・他者を操作する・尊大な自己意識・長続きしない婚姻関係

②感情因子

 ⇒共感能力の欠如・良心や罪悪感の欠如・情緒が浅い・責任感の欠如

生活様式因子

 ⇒衝動的・自己の感情や行動をコントロールする能力が低い・刺激やリスクを求める・長期的な計画性がない・無責任・寄生的な生活様式

④反社会性因子

 ⇒幼少時からの問題行動・少年非行・早期からの問題行動・仮釈放の取り消し・犯罪の多方面化

 

最近の研究では、サイコパス人格障害の核となっているものは「脳の機能構造の異常による情動障害」だという説が一般的になりつつあるようです。

サイコパスの情動障害とは、他者への共感能力の欠落・社会的罰を認識できない・自己の言動をコントロールする能力が低いという点です。

つまり、衝動性が高いから反社会的な行動を起こしたり、共感能力が低いから冷淡で尊大で他者を操作するということになります。サイコパス特有の「脳の機能構造の異常による情動障害」が原因であり、反社会的な行動や冷淡さなどはその結果であるとする説です。

 

ちなみにヘア博士の四因子説をもとに作成されたサイコパス判定方法がPCL-R法です。40点満点のテストで30点を超えるとサイコパスと判定されます。

ちなみにこのテストでサイコパスと判定される人は約1%、100人に一人の割合で存在します。

 

 

『良いサイコパスと悪いサイコパス

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善悪の観念を宗教とか哲学で論じても結論が出ませんので、今回は単純に反社会的行動あり⇒悪い」「反社会的行動なし⇒良い』とします

前述の通り、サイコパスかどうかはPCL-R法の総得点で判定されます。

ただそのスコアの内訳を精査してみると、サイコパスの中には④反社会性因子だけが低いサイコパスもいるのです。そういうサイコパスは冷淡で尊大で人の気持ちは分からない人かもしれませんが、犯罪行為には走らないサイコパスです

またサイコパスと犯罪行為の相関性を研究したデータが報告されていますが、社会的地位が高く、IQの高いサイコパスは犯罪行為に及ばない傾向があるという研究もあります

実際、刑務所にいる受刑者のうち、サイコパスはたった15%程度であり、決して多くはないのです。

ただし再犯率を見てみると、重犯罪における非サイコパス再犯率は5%程度なのに対して、サイコパスは40%と言われています。サイコパスは何度も再犯する傾向がありアメリカではサイコパスは裁判で厳しい判決を受けることが多いそうです。

また、サイコパスの遺伝率は60〜70%と言われており、ほぼ遺伝で決まります。生まれながらにしてサイコパスかどうかが決まるので、後天的に更生するのは難しいのでしょう。実際にカウンセリングや認知行動療法もあまり奏功しないそうです。

最近では、共感・親愛ホルモンとも呼ばれるオキシトシンの投与によって治療するということが試されているようですが、改善したという報告もあれば悪化したという報告もあり、サイコパスの更生に関しては、これと言った方法は発見されていません

 

 

『ASPDとは?』

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前述のとおり反社会性パーソナリティ障害のことです。人口の約4%も存在します

診断基準は以下の通りです。

  1. 他人の感情への冷淡さ。
  2. 社会的規範、規則、責務への無責任あるいは無視。
  3. 持続的な人間関係を維持できないこと。
  4. 易刺激性、および暴力を含む攻撃性。
  5. 罪悪感の欠如、また罰から学ぶことができない。
  6. 他者の非難や社会との摩擦を引き起こし、その自身の行動を合理化する傾向が顕著。行為障害が存在すること。

サイコパスの特徴と類似する点が多いです。ただ同じではありません。

ヘア博士の提唱する四因子をもとにすれば、ASPDは、生活様式因子と反社会性因子は伴うケースが多いのですが、対人因子と感情因子は必ずしも伴いませんサイコパスとは違い、犯罪を行いながらも後で心から反省したり、他者に対して共感を覚えたり、心から謝罪をすることもあるのです

 

 

『良いASPDはほぼいない』

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前述の通り、刑務所にいる受刑者のうち、サイコパスはたった15%程度であり、決して多くはないのですが、ASPDはなんと80%を占めます

ASPDは反社会的因子を伴うケースが多いため、犯罪行為の有無で善悪を決めるのであれば、ASPDの方がより危険でしょう。またサイコパスとは違い、感情因子・対人因子に障害を抱えていないASPDもいます。彼らは犯罪を犯したあと、後悔や謝罪の態度をとることもありますので更生の余地がないとは断言できないでしょう。しかしながら再犯率はやはり通常よりは高いようです。

 

 

『まとめ』

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サイコパスの中には犯罪を行うものと行わないものがいるが、ASPDではかなりの確率で何らかの反社会的行動を行う・あるいはかつて行っていたものが多い。

 

サイコパスは情動障害が顕著で、ASPDは反社会的行動が顕著。

 

③刑務所における割合は、サイコパスが15%で、ASPDは80%。

 

サイコパスは遺伝率が高く、再犯率も高く、罰から学ぶ能力が低下しているため、更生する余地はあまりない。一方で、ASPDはかならずしも感情因子・対人因子に障害があるわけではなく、良心や共感・後悔を覚えることもあることから、更生の余地がないとは言い切れない。

 

 

犯罪を起こさないサイコパスは良いのですが(まあめんどくさい人たちではあるとおもいますが)、犯罪を犯したサイコパスは、残念ながら更生の余地はほぼないです。ちなみに後日、子供のサイコパスにも触れてみようと思います。子供が凶悪事件を起こして釈放されたあと、再び凶悪事件を起こす例は日本でも散見されます

私としてはサイコパス犯罪者は、そのサイコパス性が改善されない限り刑務所(あるいは精神病院)から出すべきではないと思います。再犯率が重犯罪で40%、そうではない犯罪では80%にものぼることが統計学的に分かっているのですサイコパスに限らずですが、しっかりとした管理が必要でしょう。司法も受刑者の釈放に関しては責任をもっと負うべきです。

 

また良いサイコパスについてです。つまり犯罪を起こさないサイコパスです。

彼らは反社会的因子はないのですが、衝動性・共感能力の低さなどの対人因子・感情因子は持っています。これが良い方向に働くかどうかは、状況次第だと思います。

たとえば衝動性の強さはリスクを恐れない・迷わないことにもつながるでしょう。ハイリスクな仕事(消防士、警察官、投資家、起業家、軍人、格闘家などなど)には向いていると思います。また共感能力が低いというのは、人の気持ちを考えない分、合理的・論理的・機械的な判断は得意なのでしょう。多くの人の反対を押し切ってでもやるとき(リストラ、増税、改革などなど)はサイコパス的鈍感力がいかんなく発揮されるのかもしれません(リストラや増税が良いとはいってませんので。念のため笑)。

 

以上になります。

サイコパスな人もそうでない人も、反社会的行動をとらなければ、ある程度までは個性だと思います。ご自分の、あるいは周りの人のそういう「極端な人格」の良い点はのばし・あるいは上手く運用し、悪い点はしっかり自覚してうまくコントロールしていければ良いと思います。

 

 

<参考図書>

*1:中野信子 書、『サイコパス』、文藝春秋

*2:ジェームズ・ブレア、デレク・ミッチェル、カリナ・ブレア著、『サイコパスー冷淡な脳ー』、星和書店

*3:原田隆之 著、『サイコパスの真実』、筑摩書房

*4:ロバート・D・ヘア著、『診断名サイコパス』、早川書房

 

 

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