健康と知能・メンタルを保つ「深い睡眠」をとるには?
【概要】
前回、前々回の記事において、適度な長さの質の良い睡眠をとることで、無理のないダイエット効果が得られることや知能(IQ)を高く保てること、健康でいられること、メンタルや仕事のパフォーマンス力を最高の状態に維持できることをご紹介しました。
今回はその「適度な長さ」と「質の良い睡眠」をとる方法をご紹介したいと思います。
【人が眠くなる仕組み】
以下の基本をしっかりと理解しておいてください。
①覚醒時からアデノシンが脳内に蓄積していく。これが一定量を超えると眠くなる。
②夕方ごろから、人は副交感神経が有意になりリラックスした状態になる。
③サーカディアンリズム(体内時計)という仕組みが人体にはあり、朝自然と目が覚めて、夜は自然と眠くなるように設定されている。目の網膜が光を受け、脳の「視交叉上核」という部位がサーカディアンリズムの中枢と言われている。このサーカディアンリズムが正常に保たれるおかげで、日中はセロトニンという物質が脳内で働き覚醒状態を保ち、夕方以降はメラトニンという物質が脳内で作られ眠くなっていく。
【あなたの睡眠の質・睡眠時間は足りているか?】
まずは自分の最適な睡眠時間を知りましょう。
朝目が覚めて仕事や学校に出かけます。その際、午前中に眠くなる or 集中できないなどはありませんか?
もし午前中に集中力が下がったり眠くなるのであれば、あなたの睡眠時間や睡眠の質になんらかの問題がある可能性があります。
まずそのような状態に自分があるのかどうかを再確認してみてください。
【各論】
①特定の基礎疾患があると睡眠の質は下がる
むずむず脚症候群、肥満、自閉症スペクトラム、不眠症などなど...。ある特定の持病があると睡眠の質が下がることが分かっています。もし持病や疾患がある方は、かかりつけ医に相談してください。
②無理なダイエットは禁物
サーカディアンリズムが適切に保たれていれば、セロトニンやメラトニンが適切に働き、朝は覚醒状態に、夜は自然と眠くなるはずです。
しかしながら、極端に食事を制限するダイエットなどを行うと、セロトニンやメラトニンなどが正常に作られなくなってしまいます。その結果、朝に集中力が欠けたり、夜になっても眠くならないなどの症状が起こります。
極端な食事制限をしている方、栄養バランスが悪い方などは、食事を見直してみましょう。
③ブルーライト、人工照明などには注意
寝る1時間前には部屋を暗くして、スマホやテレビ・パソコンなどを使うのを止めましょう。
先述の通り、サーカディアンリズムは目から入ってくる光の強さに大きな影響を受けてしまいます。またブルーライトは睡眠の質を下げることも分かっていますので、寝る前はそのようなものは避けた方が無難です。
④体温の変化に注意
お風呂に入るタイミングと寝室の気温に注意しましょう。
寝る直前に熱いお風呂に入ると交感神経が有意になってしまい、睡眠の質が低下してしまいます。お風呂は寝る90分前に入りましょう。なぜ90分なのか?それはお風呂で上昇した体温はその後ゆっくりと下がっていきますが、その体温低下にかかる時間がおおよそ90分なのです。そして体温(正確に言うと深部温度)が下がったときが一番入眠しやすいタイミングなのです。
また睡眠にとっての最適な寝室温度は15ー20度くらいであることが分かっています。エアコンなどを上手に使って、室内温度を調整しましょう。
⑤カフェインをとるタイミングに注意
眠くなるとコーヒーや栄養ドリンクを飲む人もいるかと思います。ご存知のとおり、コーヒーや栄養ドリンクなどにはカフェインという覚醒作用のある物質がふくまれています。このカフェインは先述のアデノシンの作用を一時的に妨害することで覚醒作用を引き起こします(アデノシン自体を消失させるのではなく妨害しているだけです。カフェインが脳内からなくなると溜まりたまったアデノシンが一気に脳に作用し、眠くてだるくなります。栄養ドリンクを飲んだあとしばらく経つと急に疲れが出るのはこのためです)。
カフェインが体内から半分量消失するまでにかかる時間(半減期)は5−8時間と言われています。カフェインや栄養ドリンクを飲むのは午後2時ごろまでにとどめておきましょう。そうでないと、体内に残ったカフェインがアデノシンを夜まで妨害し続け、夜の自然な眠りが引き起こされなくなりますし、睡眠も浅くなります。
⑥睡眠に良い運動について
運動をすることは質の良い睡眠を得るためには非常に効果的です。それではどの程度の運動をいつ行えば良いのでしょうか?
ノースカロライナ州のアパラチア州立大学で行われた調査です。被験者を午前7時、午後1時、午後7時に運動する3グループに分けて睡眠のパターンを調べました。
その結果、午前7時に運動したグループの睡眠時間が最も長く、睡眠の質も深いことが分かりました。
適度な運動は成長ホルモンの分泌も促します。この成長ホルモンは損傷した筋肉などを修復する作用と同時に眠気を誘発する効果もあることが知られています。
また朝に軽いウォーキングを行うのも非常に良いことです。朝6時〜8時ごろのウォーキングによりセロトニンが脳内で作られ、午前中の覚醒状態がアップします。
遅い時間に運動を行い際には注意が必要です。運動をすれば体温は上昇します。前述の通り、体温が上昇した状態のままでは自然な眠りは妨げられます。運動によって上昇した体温が下がるまでには4時間かかるというデータもあります。夜遅い時間は激しい運動は避け、ヨガやストレッチなど軽いものにしましょう。
⑦サプリメントについて
眠気を誘発するサプリメントとしてはメラトニンやテアニン、マグネシウムが有名ですね。
本来であれば自然な食事と生活習慣から上記のものを摂取する・あるいは体内で合成するのがベストですが、もし食生活が乱れているのであれば上記のサプリメントを試してみるのも良いかもしれません。
以上いかがだったでしょうか?
睡眠時間と睡眠の質は非常に重要であることは前の記事に紹介したとおり、知能を向上させる効果やダイエット効果などさまざまな効果が期待できます。
どうかみなさん無理をなさらず睡眠を大切にしてくださいね...!
それではまた次の記事で!
【参考文献】
①ショーン・スティーブンソン著、『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』、ダイヤモンド社
②ニック・リトルヘイルズ著、『世界最高のスリープコーチが教える 究極の睡眠術』、ダイヤモンド社
③マシュー・ウォーカー著、『睡眠こそ最高の解決策である』、SBクリエイティブ社
④樺沢紫苑著、『精神科医が教えるぐっすり眠れる12の法則』
【過去記事】