あなたのストレスの原因は「思いやり」かも?適度に人と合わせて生きる共感能力とは?
共感能力とは、相手の心や感情を読む力のことで、程度の差こそあれ、誰もが持っている能力です。
みなさんもこんな経験はありませんか?
「この人、今日不機嫌だな...」
「なんとなく今日怒られる気がする...」
「この人、私の話に興味もってないな...」
このように、なんとなく相手の感情や心を読めた経験があると思います。
人の心がなんとなく読める仕組みには色々な説が唱えられています。
■ 確証バイアス説
→カンタンに言うと単なる勘違いという説です。たまたま「なんとなく〜な気がする」と思っていて、自分の予想が当たっていたパターンばかりが記憶に残っていて、外れていた場合は忘れてしまっているということです。
■ ノンバーバルコミュニケーション説
→人の表情や仕草、行動などの非言語的な部分から、相手の感情や心を読み取っているという仮説です。
■ ミラーニューロン説
→ミラーニューロンという特殊な脳細胞がヒトの脳には備わっていて、共感能力を司るのではないかとする説です。通常生まれたばかりの赤ちゃんに多い細胞です。生まれたばかりの赤ちゃんは、我々大人と違い、言語を理解することができません。そのため言語以外の方法、つまり「真似る」という行動を通して世の中のことを学習します。その際に赤ちゃんはこのミラーニューロンを使い、周りの人の動きや仕草を効率良く真似ているという説があります。通常このミラーニューロンは大人になるに従って減少していきます。
この人の心を読む共感能力は、適度に発揮されれば人間関係を円滑にしてくれます。
しかし高すぎる人の場合、他人の悪い感情にも大きく影響を受けてしまったり、過度に周りの人や空気に合わせようとしてしまうため、本人は非常に苦しい思いをします。
この「高すぎる共感能力」が原因で日常生活が不安定になる原因を二つご紹介したいと思います。
それはHSP(High Sensitivity Person:共感能力がもとから高すぎること)と過剰な利他行動です。
<HSP(High Sensitivity Person)>
とても共感能力に優れている人格のことで、人口の10%程度はいるのではないかといわれています。
以下のような特徴があるといわれています。
①感情や感覚の処理が非常に深い。
→通常の人に比べ、感情や感覚などの非言語的情報の処理がきわめて緻密で詳細に処理される傾向があります。
②感情や感覚の刺激を受けやすい。
→通常の人に比べ、感情や感覚、その場の雰囲気に非常に敏感です。このようにHSPの人は感受性も高すぎるため、通常の人にとっては何でもない状況でも、心身ともに疲れて、無気力になったり不機嫌になったり体調不良になったりしてしまいます。
③高い共感能力。
→ミラーニューロンが活発で、感情移入が強いといわれています。
④細かい変化に敏感。
→環境や雰囲気のわずかな変化にも非常に敏感で、よく気づきます。
このようなHSP体質の人は、「環境や人の影響を敏感に受け取ってしまい、心身が疲れてしまいやすい」という欠点がある一方で、「感情や感覚を深く情報処理できる」「他人の気持ちがよく分かる」などの長所がありますので、芸術家や小説家、カウンセラーなどに向いているかもしれませんね。
HSPの人が苦しむ要因は以下の二つです。
①感情・感覚処理が深すぎて、言語が追いつかない。
→つまり自分の感じたこと、経験したことをうまく表現できないのです。対処法としては、普通の人以上に語彙力・表現方法をみがいていくことが挙げられます。
②共感能力が高すぎて、人や周りの空気の影響を受けやすい。
→HSPは高い共感能力と感受性を持ちます。そのため、状況が変わるごとに心が振り回されてしまい、疲れやすいのです。対処法としては、何か集中できるものを常に持っておくことです。職場であれば仕事に集中するので済みますが、移動中の電車の中ではたとえば読書やゲームなど夢中になれることを行うことです。これによって周りの環境から目をそらせることができ、周りからの影響を抑えることができます。
<過剰な利他行動>
前述の通り、高い共感能力は人間関係を円滑にしますので、共感能力の高さ自体はよいものです。
しかしながら共感能力の高い人の中には、過剰な利他行動(自分よりも周りの人の利益を追求する行動)に走る人もいます。その結果、自分はボロボロになり、心身ともに疲れきってしまいます。
一方で高い共感能力を持ちながらも、幸せな生活を送ることができる人もいます。
この違いは何なのかというと...
「自己犠牲が伴うか、伴わないか」
...です。
アダム・グラント著のベストセラー「GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代」(三笠書房)によると、人間は
「与える人(ギバー)」
「奪う人(テイカー)」
「自分の利益が見込めるならばギバーになる人(マッチャー)」
の3種類に分けられるそうです。
さらに社会的に成功するギバーは自分と周りの人の幸せを追求するのに対して、成功しないギバーは自己犠牲を問わずに人に利益を与えようとするため、テイカーの餌食になるそうです。
利他行動に走る人も、テイカーの餌食になってしまっている可能性があります。
これを防ぐには「自己犠牲の程度をあらかじめきめておく」「自己犠牲を払う対象をきめておくこと」ことが重要です。
「ここまでは譲るけど、これ以上はダメ」という基準をしっかりと持っておくことが大事です。また、自己犠牲を払う対象を、家族や親友・恋人・恩人などにしぼっておくことで、間違ってテイカーに自己犠牲を払うことを防げます(テイカーに甘い汁をすわせると延々とあなたにパラサイトするので気をつけましょう)。
以上です。
なんどもいいますが、共感能力自体は良いものです。
人の心がまったく読めないと逆に生きていく上で不利になります。
生まれながらに人の感情に共感が示せないサイコパスは、人を操ることで上手く生き延びられているわけですが、そんな生き方はイヤですよね?
共感能力をのばす方法は以前のEQの記事を参照にしてのばしてもらい、共感能力が高いことによる弊害は今回の記事を参考にして対処してくださればうれしいです!
それではまた次の記事で!
<参考図書>
アダム・グラント著、「GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代」、三笠書房