会うと危険!身近にいる異常人格者達〜ダークトライアドとは?〜
<ダークトライアドとは>
今回は人間の「悪」について書いていこうと思います。
「悪」という観念を語るとき、往々にして用いられる学問は宗教や神学、哲学であると思います。
では科学の世界ではどうなのでしょうか?
実は心理学・精神医学の世界において、人間の「悪」に対する定義はある程度答えが出ています。
それがダークトライアド(Dark Triad, 暗黒の三要素)という考え方です。
ダークトライアドは、三つのやっかいな特性を併せ持ってしまった人格のことです。
<意外と身近にいる?サイコパス・マキャベリズム・ナルシシズム>
以下にサイコパス・マキャベリズム・ナルシシズムの特徴を簡単にまとめておきます。
①人の気持ちが全く分からない「サイコパス」
サイコパスの特筆すべき特徴は、共感能力が低い、つまり人の気持ちが分からないという点です。さらに衝動性が高い人格のため、自分の行動や感情をコントロールすることがあまり上手くありません。さらには罰を認識することができません(脳の機能構造的欠陥と言われています*2)。そのため、彼らは犯罪行為や人を平気で傷つける言動を行います。
繰り返しますが、彼らは罰を認識できないため、罰を与えても治りません。人の気持ちが分からないため道理で説得を試みても治りません。衝動性が高いのでまた同じことを繰り返します。実際に、サイコパスや類似した人格をもつ反社会性パーソナリティ障害の累犯率は非常に高いことが科学的に証明されています。
こういう人たちは前述の通り、言っても治りませんので、スルーし、距離をとるほうが賢明です。
サイコパスは周りの人から色々なもの(労力、時間、好意、お金など)を搾取し、周りの人を振り回す困ったチャンなのです。
さらにやっかいなことに、ロバート・D・ヘア博士によると、サイコパスは人口の1%ほどもいると言われています(*1)。
つまり100人に一人はサイコパスです。
皆さんが通勤通学でいつも使っている満員電車の車両の中にも、少なくとも1人はいるでしょうね(笑)。
ちなみにサイコパスを判定する方法はPCL-R法というアンケートテストのようなものがあり、臨床の現場でも用いられています。
②行き過ぎた合理主義者「マキャベリズム」
簡単に言うと「超合理主義者」です。
必ずしも合理主義は悪いとは言いません。ただその合理主義が行き過ぎていること、何にとっての合理主義なのかによって、場合によっては危険人物にもなり得ます。
(たとえば「みんなにとって」合理的な判断を下す人は有用人物となるでしょうが、「じぶんにとって」合理主義を貫けば、それはただの利己主義になります)
マキャベリズムのもう一つの特徴として「人を操る能力が高い」ことが上げられます。
さらに人の気持ちや感情よりも合理性を過剰に重んじる人格特性であるため、前述のサイコパスと同様、人の気持ちを踏みにじるような行動や言動・決定を行う傾向があるのもマキャベリズムの特徴です。
正論やルール・専門知識や権力を振りかざし、あなたの気持ちに寄り添うこともなくただ正しければいい、合理的であればいいという主義主張であなたに接してくるのです。
マキャベリズムかどうかをチェックする方法としてはMACH-IVというアンケート方式の判定法が用いられます。
③自分大好き「ナルシシズム」
いわゆる「自己愛性パーソナリティ障害」の人たちです。
ナルシシズムは「過剰な自分への期待」と「それを認めてくれない周囲への不満・不安」の間で常に揺れ動いており、そのため精神的に非常に不安定な人たちです。よってその不安を埋め合わせるような行為や、周囲に自分を認めさせるために過剰な演出を行うこともあります。
たとえば、ある人が自分の恋人に洋服をプレゼントしたとしましょう。
普通、その動機は「相手の喜ぶ顔が見たい」とか「誕生日だから」などでしょう。
ただナルシシズムの場合は違います。
「自分の隣を歩く相手を着飾らせれば、自分の価値も上がって見えるはずだ」という動機でプレゼントを贈ります。
結局ナルシシズムは、周囲は自分を誉め称えて当然、周囲は自分のためにある、という考え方なのです。
ナルシシズムかどうかをチェックする方法としてはNPIという方法が知られています。
<まとめ>
サイコパス・マキャベリズム・ナルシシズムには共通点があります。
サイコパスは脳の機能構造の異常により人の気持ちが分かりません。
マキャベリズムは合理性だけを求め過ぎて人の気持ちが分かりません。
ナルシシズムは自分が大好き過ぎて周囲の人の気持ちが分かりません。
つまり人間の悪とは「人の気持ちが分からないこと」「人の気持ちを無視した言動をとること」と言えるかも知れません。
彼らはパーソナリティに異常があり、専門家ではない私たちの多くは対策が打てません。
ダークトライアドにもし出会ってしまったなら、距離をとる、スルーする、何も与えない、治そうとしない(言って分かる相手ではありません)、戦おうとしない(ほぼ何を言っても無駄なので勝ち目はありませんし、敵対すればかなりやっかいな相手です、しつこいと言う意味で)という姿勢で接する方がいいでしょう。
ぜひダークトライアドを避け、平穏無事な日常を過ごしたいものですね...!
それではまた次回の記事で〜。
<参考文献>
*1:ロバート・D・ヘア著, 診断名サイコパス 身近にいる異常人格者たち, 早川書房
*2:ジェームズ・ブレア, デレク・ミッチェル, カリナ・ブレア著, サイコパスー冷淡な脳ー, 星和書店