【HSP】過度に心が敏感な人たちが苦しむ理由とその対処法とは?
【概要】
今回の記事は「HSPの人が苦しむ理由とその対処法」についてです。
HSPとはHighly Sensitive Personの略です。「感受性の高い人たち」という訳にでもなるのでしょう。
今回はHSPに該当する人の特徴と、よくある悩みとその対処法をご紹介したいと思います。
目次
・HSPの概要
・HSPに対する誤解
・HSPの人が遭遇しやすい悩みと対処法
【HSPの概要】
HSP(Highly Sensitive Person)とは、心理学者のアーロン博士が1997年に提唱した概念です。人口の約10%ほどが当てはまるとのことです。HSPの主な特徴には、下記の通りです。その頭文字をとって「DOES」という略称がついています。
①Depth of processing(深い感情理解・処理能力)
通常の人に比べ、感情や感覚などの非言語的情報の処理がきわめて緻密で詳細に処理される傾向があります。
②Over-stimulation(感情・感覚の刺激を受けやすい)
通常の人に比べ、感情や感覚、その場の雰囲気に非常に敏感です。このようにHSPの人は感受性も高すぎるため、通常の人にとっては何でもない状況でも、心身ともに疲れて、無気力になったり不機嫌になったり体調不良になったりしてしまいます。
③Emotional responsiveness & Empathy(高い共感能力)
共感が強いといわれています。
④Sensitive to subtle stimuli(細かな変化や物事に敏感)
環境や雰囲気のわずかな変化にも非常に敏感で、よく気づきます。
【HSPに対する誤解】
①HSPは精神医学上は「存在しない」
注意事項ですが、HSPという概念はまだ歴史が浅いため、あくまで心理学上の概念に過ぎないという点に注意してください。現段階では、DSMやICD(パーソナリティ障害や精神疾患の診断基準について詳細にまとめられているマニュアル。広く世界に認められている。)などの精神医学上の診断マニュアル的にはHSPは存在していません。つまりHSPの医学的診断方法はないのです。つまりHSPは心理学的には存在して、精神医学上は不明で、学術論文は一応あるので科学的根拠がないとまでは言い切れないという曖昧な概念であるとご理解ください。
HSPかどうかは、あくまで上記の心理学者が提唱しているDOESに当てはまるかどうかで決まっています。よってネット上のすべてのHSP診断には、心理学的な根拠はあるものもあるかもしれませんが、現段階では医学的根拠はありません。よってHSPは疾患や障害ではなく、ある特定の心理特性を持った人とご理解ください。
②HSPは特殊能力者でも特別な才能でもなんでもない
HSPの共感能力(人の感情や気持ちを汲み取る能力)が高く持ち上げられる傾向にあるようですが、重症なサイコパスや重い脳疾患の患者さんを除けば、共感能力自体は誰にでも備わったものです。動物実験レベルではミラーニューロンやフェロモンなどを介して、感情やストレスが伝染するという研究結果もあります。精神分析学ではさまざまな感情の「投影」や「同一視」、「転移」などの現象も確認されています。ちなみに共感能力は後天的な訓練で向上させることができます(*1)。
だれでも持っている共感能力が高めの人がHSPです。よって仮にあなたがHSPだったとしても別に化物でも怪物でも人外でも特殊能力者でもなんでもありませんのでご安心ください。
③HSPという概念は、発達障害・不安障害などの別の障害との混乱を招きかねない
HSC(Highly Sensitive Child)というHSPの子供バージョンも提唱されているようです。人一倍感受性が高いため、感情の起伏が激しかったり、孤立しやすかったり、音や光に敏感だったり、一人遊びが好きで想像性と富んでいたり...などの特徴があるようです。ただこの記述のみだとパーソナリティ障害や発達障害の方が近いと思われます(客観的な症状は自閉症スペクトラムや不安障害などの症状とかなり一致しています。主観的には自閉症スペクトラムは他者への共感性は高くはないと思われますのでそこが大きな違いではありますね)。
HSPという概念が、今後医学的に定義され、きちんとした研究が進めば良いのですが、現段階で(つまりHSPの医学的根拠がない段階で)自分はHSPだとか自分の子供はHSCだとか自己判断してしまえば、重大な発達障害や不安障害を見逃し治療・ケアが遅れる危険性すらあります。HSPは、はやりの用語なので自分や周りの人を当てはめてしまう傾向があるのは分かりますが、安易な自己診断は意味がないばかりか危険しか招きませんのでご注意下さい。
【HSPの人が遭遇しやすい悩みと対処法】
①感情・感覚処理が深すぎて、言語が追いつかない。
つまり自分の感じたこと、経験したことをうまく表現できないのです。対処法としては、普通の人以上に語彙力・表現方法をみがいていくことが挙げられます。
②共感能力が高すぎて、人や周りの空気の影響を受けやすい。
HSPは高い共感能力と感受性を持つため、状況が変わるごとに心が振り回されてしまい、疲れやすいのです。対処法としては、何か集中できるものを常に持っておくことです。職場であれば仕事に集中するので済みますが、移動中の電車の中ではたとえば読書やゲームなど夢中になれることを行うことです。これによって周りの環境から目をそらせることができ、周りからの影響を抑えることができます。
③共感能力が高すぎて、感情の自己制御・他者との関わり方に障害が出る。
過去記事でEQ(心の知能指数)の紹介をしました。EQは下記の4つの能力で定義されています。
・自己感情の理解
・自己感情のコントロール
・他者感情の理解
・他者との関わり方のコントロール
この4つの能力がバランスよく高いことと社会的成功には相関関係があることが報告されています(*1)。HSPの人は簡単に言うと、「自己感情の理解」・「他者感情の理解能力」は高い一方で「自己コントロール」・「他者との関わり方の能力」が低いから、周囲からの感情に流されたり影響されやすかったりする一面もある思われます。そのケースではEQをバランスよく向上させることが解決策となるでしょう。
【まとめ】
①HSP(Highly Sensitive Person)はあくまで心理学上提唱されている概念であって、精神医学的な診断名としては現段階では存在しない。
②HSPの特徴はDOESの4つの頭文字で表される。すなわち「深い感情理解・処理能力」「感覚・感情に過剰に敏感である」「共感能力が高い」「細かな物事に敏感」。
③HSPと言う概念は精神医学の臨床現場に混乱を招きかねない。自己や周りの人をHSPだと安易に判断するのは誤りを招き、時には自閉症や不安障害などの重大な疾患を見逃し、治療・ケアのチャンスを失わせてしまう。「おかしいな」と感じたらまずは医学的根拠のある疾患を疑うこと。HSPだろうと勝手な自己判断をして放っておかず医療機関を受診すること。
④HSPの人は色々な悩みを抱えることがあるが、その原因として、EQの定義する4つの能力に偏りが生じていることが考えられる。つまり共感能力ばかり高くても、それを上手く表現したり、避けたり、周りを対処できなければ意味がない。共感によって得た自己理解・他者理解を上手く活かすには「自己コントロール能力」「他者との関わり方の能力」もバランスよく向上させることが重要。
以上です。
EQを向上させる方法は参考図書*1に詳細が書かれています。EQテストもオンライン上で行えるパスコードがついていて便利です。
良著ですので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
参考までに私のEQテストの結果を下記に添付しておきます。各4つの能力を100点満点で採点してくれます。
それではまた次回の記事で!
<参考文献>
*1:トラヴィス・ブラッドベリー、ジーン・グリーブス著, EQ 2.0 EMOTIONAL INTELLIGENCE 2.0 「心の知能指数」を高める66のテクニック, 株式会社サンガ
<過去記事>