【風変わりな人たち】スキゾタイパルパーソナリティ障害とは?
【概要】
今回は、風変わりな思想をもつ「スキゾタイパルパーソナリティ」についてご紹介します。
以前スキゾイドパーソナリティを紹介しました。孤独を愛する人・孤独を好む人たちです(下記過去記事参照)。スキゾタイパルパーソナリティの特徴は、スキゾイドの土台である孤独を好む傾向に加えて、現実感覚の欠如・希薄化が見られることです。
目次
・スキゾタイパルパーソナリティ障害の診断基準
・スキゾタイパルパーソナリティ障害の特徴
・スキゾタイパルパーソナリティ障害の克服
・スキゾタイパルパーソナリティ障害への接し方
・まとめ
【スキゾタイパルパーソナリティ障害の診断基準】
スキゾタイパルの主な診断基準は以下の通りです(参考文献*1)。
前述のとおり、スキゾタイパルパーソナリティ障害には、スキゾイドの孤独を好む傾向に加えて、現実感覚の欠如・希薄化が見られることが特徴的な症状になります。下記9項目のうち5つ以上に当てはまると、スキゾタイパルパーソナリティ障害の疑いが強まります。人口の約0.6~2%ほどが該当するそうです。
①関係念慮
⇒偶然の出来事に特別な意味を見いだそうとする執着的な思考のことです。
②行動に影響し、下記の文化的規範に合わない奇異な信念、または魔術的思考
⇒迷信深さ、テレパシー的思考(誰々の考えていることが伝わってくる等)、第六感を信じることなどです。カルト的な儀式を行ったりすることもあります。危険な過激思想に染まることもあり、そのような患者は社会的にも危険な存在になります。
③普通でない知覚体験、身体的錯覚。
⇒例えば、ないものがあるかのように感じたりすること等です。
④奇異な考え方と話し方
⇒あいまいで抽象的な説明や話、まわりくどい・意味もなく詳細な話、細部に異常にこだわる等独特の話し方をする傾向があります。
⑤猜疑心の強さ、または妄想観念。
⇒疑り深く被害妄想などにも発展しやすい。
⑥不適切な、または限定された感情。
⑦奇異な、奇妙な、または特異な行動または外見。
⑧第1度親族以外には、親しい友人または信頼できる人がいない。
⑨過度な社会的不安があり、なかなか軽減しない。また自己卑下的な判断よりも妄想的恐怖を伴う傾向。
スキゾタイパルは別名統合失調型とも呼ばれます。上記の診断基準を見ても明らかなように、統合失調症に非常に近いですが、そこまでの人格変容は見られません。またアスペルガーとの鑑別が難しい場合もありますが、アスペルガーが客観的で観察的な思考への執着が強いのに対して、スキゾタイパルは主観的・妄想的・超越的・非論理的な世界観を持ち、現実世界からの乖離が特徴的です。
【スキゾタイパルパーソナリティ障害の特徴】
上記のように「スキゾイドとしての側面=孤独を愛する傾向」に「非現実的・非合理的思考や思想を持つ傾向」を加えたものがスキゾタイパルです。
よって彼らは孤立しがちで、現実的な課題に対して対処能力が低い傾向があります。けっして知能が低いわけではないのですが、外界にほとんど興味を示さず(重要でないとすら思っている)、内界にハマる傾向があります。また、その独特の思考様式のため、周囲の人とコミュニケーションがとりづらく、奇異で奇妙な人と思われてしまう傾向があります。
一方で、彼らの思考様式は独特で独自性が高いため、文学者や詩人などのフィクションを扱う分野の仕事では能力を発揮する可能性があります。スキゾタイパルと思われる日本の偉人としては夏目漱石がそうであるとの指摘もあります(参考文献*2)。
【スキゾタイパルパーソナリティ障害の克服】
①カウンセリング
カウンセリングなども効果があると言われます。ただ注意点なのですが、スキゾタイパルの人は内界を安全地帯としている傾向があります。そのため、よくある精神分析療法の手法である「心の内面を吐露させる」などの手法は、症状を悪化させる可能性があるため、注意が必要です(参考文献*3)。これは安全地帯を侵されたことによる影響なのかもしれません。
②服薬治療
非定型抗精神病薬や中程度のマイナートランキライザー(ベンゾジアゼピンなどに代表される精神安定剤)が用いられることもあります。
③現実世界・合理思考をおろそかにしない
スキゾタイパルの人たちは内面にこもる性質があり、現実世界をあまり重要視しない傾向があるため、現実的な課題処理が苦手な傾向があります。もっともこれは彼らの能力の低さに起因するのではなく、内面にこもる性格に由来します。意識的に外の世界、現実思考・合理性に着目していけば、スキゾタイパルの欠点を補っていけることでしょう。
④現実適応能力の高い友人を作る
スキゾタイパルの欠点を人脈で補うという戦略です。スキゾタイパルの人はスキゾイド同様に、対人不安やコミュニケーション能力の低さなどはありません(スキゾタイパルはややコミュニケーションに独自な部分はありますが)。よって、人と関わろうと思えば出来ないわけではありません。まずは少数でも良いので、気の合う、現実的適応能力の高い友人を作りましょう。そのような友人がスキゾタイパルの弱点である現実適応能力の低さを補ってくれるでしょう。
【スキゾタイパルパーソナリティ障害への接し方】
①本人のペースを尊重する。
彼らはマイペースです。また独特の世界観を持ちます。よって、あまりずかずかと距離を縮めようとすると避けられたり・激高される可能性があります。彼らのペースを尊重し、彼らの世界を壊さないように接しましょう。
②ユニークさを認める。
彼らのもつ独特の世界観を精査したり、議論のやり玉にあげて論難しようとしてはいけません。そんなことをやってしまえば彼らはさらに頑になってしまいます。彼らの独自な世界観から得られるユニークな発想に注目してあげましょう。
【まとめ】
①スキゾタイパルの特徴は、孤独を好み、独特で現実とは乖離した世界観をもつことである。
②スキゾタイパルは妄想や魔術的思想が強いため、場合によっては危険思想や過激思想に染まってしまうこともある。このようなスキゾタイパルは危険な人物ともなりうるため、注意が必要である。
③現実世界にとらわれない独自な考え方を持つため、フィクションなどを扱う仕事には向いているかもしれない。
④スキゾタイパルの克服には、カウンセリング・服薬治療・現実世界にも目を配る習慣・現実適応能力の高い友人を作るなどの道がある。
⑤スキゾタイパルの人たちと接する注意点は、彼らのマイペースさを尊重してあげること、独自な点に注目してあげることなどである。
以上いかがだったでしょうか?
スキゾタイパルパーソナリティは、パーソナリティ障害の中でもかなり独特な思考様式をもつ人格です。危険な思想を持っていない限りは問題ないので、彼らのユニークさを活かす方向で対人関係を調整していければ、彼らの能力を発揮させることができるでしょう。
それではまた次の記事で!!
<参考文献>
*1:『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)
*2:岡田尊司 著、『パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか』(株式会社PHP研究所)
*3:牛島定信 著、『パーソナリティ障害とは何か』(株式会社講談社)
<過去記事>